声と性癖
「…?大丈夫?あの、代理店さんだけれど。」
「大丈夫!大丈夫!問題ないよ。あ、電話ね?ありがとう。」

それは、先程結衣が連絡した代理店だった。
彼からは、落ち着いたイタリア車を貸してくれる先が見つかったので、とりあえず、抑えてあるが、どうするかと相談があった。

結衣は査定課とも連絡を取り、客先が希望した場合はそれで対応するとして、その後は案件は査定課で引き取ります、ということで話がついた。


翌日の結衣だ。
昨日のこともあり結衣は、ふうっと息をついてからヘッドセットをつける。

『はい。蓮根です。』
「お忙しいところ、恐れ入ります。」
『高槻さんかな?』
「は…い。」

楽しそうな、少しからかうような声だ。
今まで何年もこの仕事についてきて、言葉に詰まってしまうことなどない。

たまに呆れて、どう返そうか、ということはあっても、名前を呼ばれただけで、というのは。
『大丈夫?』
「あ、申し訳ございません。」
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