声と性癖
怖い、怖い、どっかで見てんの?
つい、その場でキョロキョロしてしまう、結衣である。

『先程のお店のオーナーさんに、終わったらご連絡いただくようお願いしていたんですよ。』
くすくす聞こえる笑い声。
やっぱ、どっかで見てる?!

「あ…のっ。」
『高槻さん、ぜひ会ってほしい。聞いてほしいことがあるんです。』

また……だ。
その、とても真摯な声と逆らい難い、響きに、
「どうすればいいんですか?」
と結衣は答えてしまう。

『宿泊先のホテルの少し手前にバーがあるんです。そこにいます。』

今、結衣がいるところから歩いて5分くらいのところだ。

そんなところにいるのでは仕方ない。
それに聞いてほしいこと、の中身も気になる。

「分かりました。」
そう返事して、結衣はその店に向かうことにした。
             
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