声と性癖
電話を受けているセンター員に何かあったり、クレーム事案が発生した場合、結衣達が代わって受けることになるのだ。
マニュアルはあるものの、相手が人である以上、全てをマニュアル通りに対応すれば良いと言うわけではない。

なかなか、そのあたりの対応が難しい部署ではある。
ふと、結衣が担当の島のデスクに目をやると、少し困った様子で電話に出ているスタッフが、目に入った。

その様子に結衣は、ん…?と回線を切り替える。
結衣のヘッドセットに声が入ってきた。
『難しいことは言っていないんですけどね。』
ため息混じりの男性の声からは、すこしうんざりしているような雰囲気を感じた。

「あの、お探ししてみますので、折り返しをお待ち頂けますか?」
『上司はいないの?』
相手はヒートアップはしていないが、困らせてはいるようだ。

結衣は(代わっていいよ。)とサインを送る。
受け手のスタッフは、ホッとした様子だ。
「では、上席にお繋ぎします…。」

そのスタッフが言うには、事故に巻き込まれた顧客が代車を要求しているが、代車の取り扱いがない車を指定しているのだと言う。
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