声と性癖
判断出来ないのなら、上席に変われ!と怒鳴りつけたいところをぐっと抑えて敢えて淡々と話す。

やはり担当者では判断つけかねるようで、結局変わってもらうことになったのだ。
これで、上席まで話にならなかったら、本気で切れよう、と思っていた蓮根である。

『お電話変わりました。上席の高槻と申します。』

女性か!

しかし、さすがに上席と言うだけはあって、落ち着いていて柔らかい声は、こちらに安心感を与えてくれた。

『お車、ないと困りますよね?』
そう問い掛けられ、そうだ、と返事をしようとして、彼女の声に気付いたのだ。

『今すぐ、ご用意出来るのが…』
何か話しているが、今、耳に入ってくるのは、柔らかいそのトーン。

柔らかいくせ、言うべきことは伝えてくる。
マニュアルがあるはずなのに、ある程度内容が頭にはいっているのか、画一化された答えではない。

それが、さらにこちらの気分を良くしてくれている。
気持ちの良い声。

明日、改めます、と言うので、この人に対応して欲しいと思い、フルネームを聞き出した。

『高槻結衣』
それが彼女の名前だ。
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