声と性癖
ディーラーに行くと、保険会社から連絡を受け、代車を用意している、と言うので、その準備を待ちながら、応接に座っていた。

会社のメールと同期させているタブレットには、ガンガンメールが入ってくる。
その字面を眺めながら、今日のやり取りを思い出した。

高槻結衣、の声がすごく良かった。

蓮根は若干、声フェチ気味の自覚はある。
人混みの中でも、自分の好きな声には反応してしまうことがある。

声、は匂いと同じで防ぐことが出来ない。
しかも、情報の大きな部分を締めている。

確かに、品があって、柔らかく、さらっとしたその声は蓮根の好みだが、この、上品で清楚な取り澄ました声を乱れさせたら、どうなるんだろうか、と思ったのだ。

すごく…いい。

それは他の人にとって、スタイルの良い人を見たときと同じで、脱がせたらどうなっているんだろう、と同じようなものである。

翌日、電話を掛けてきた高槻に、昨日の失礼を詫び、対応に感謝したところ、『大丈夫ですか?』と聞いてくれて、大丈夫だ、と答えると『よかったです。』と言ってくれる。

もしかしたら、普通の対応かも知れないが、自然に相手に寄り添うその感じにぐっときたのだ。
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