ずっと気づかなかっただけ。
「…チカくんだってフラフラするじゃん。」

ふんっと、さっきまでの反省は何処へやらで、

明後日の方を向くと、

返事が返ってこない。

い、いたたまれない…

チラリと様子を窺うと、

すっごくマヌケな顔のチカくん。

え、初めて見たかも…

「なに、真白、美波に嫉妬したの?」

「…、」

信じられないような顔をするチカくんに、

少しムッとして返す。

「私だって、最近自覚したばっかりの鈍感だけど、…チカくんと同じ気持ちなんだから嫉妬もするよ?」

最後は恥ずかしくなって、

チカくんの手を引きながら、

改札へ向かう。

「…明日、死ぬかも。」

チカくんから聞こえた、らしくない発言に、

思わず笑う。

「生きてもらわないと困るよっ!」

「…真白も言うようになったなぁ」

お兄ちゃんみたいに呟くから、

本当にこの人わかってんの!?って

振り返ると、

チカくんがとっても幸せそうな表情と優しい目で自分を見てて、

何も言えなくなる。

…ずるいっ!

イケメン、ずるい!

破壊力抜群のチカくんに、

いつも通りに話しかけられなくて、

揺れる電車で、胸のドキドキを誤魔化して過ごした。

でも、チラリと盗み見たチカくんもきっと同じこと思ってるんだから…

緩む頬を隠すように窓の外を見つめながら帰った。
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