フラれもの同士(原題:頑固な私が退職する理由)
今でこそこんな私だけれど、幼稚園の頃まではお姫さまに憧れていた。
シンデレラ、白雪姫、眠り姫。
私にもいつか素敵な王子さまが現れて恋に落ち、少しの試練を乗り越えて優雅に暮らすのだろうと信じてやまなかった。
だけど物心がつき、そんな世界はないのだと悟るのとほぼ同時に、気づいてしまった。
私がシンデレラの世界の人間なら、意地悪な継母。
白雪姫の世界の人間なら、老婆に扮してまで姫を殺めようとした妃。
眠り姫の世界の人間なら、宴に呼ばれなかった魔女。
己の目的のために他人を貶めることを厭わず、己が貶められた時は報復しようとする性格なんかはまさにそうだ。
自分からは行動を起こさないくせに不幸ぶって、権力のある人間の力でのうのうと贅沢をするヒロインにはもはや嫌悪しか感じない。
私はこの手の物語のヒロインには絶対になれない。なりたくもない。
これに気づいた当初は、子供心にさすがにショックを覚えた。
しかし成長するにつれ、現実世界では正直者や優しい人間よりもズル賢く強かな人間の方が多くを得て幸せに生きていることがわかって救われた。
正義が勝つとは限らない。
健気が救われるとも限らない。
堪え忍べば必ず報われるわけでもない。
優しさで人を救うことはできるけれど、自己中心的な考えができなければ豊かにはなれないし、自分や自分の本当に大切な人を守ることもできない。
だから私は、ズル賢く強かに、多くを得て生きようと決めた。
性格が悪いと言われても構わない。
腹黒いと揶揄されることなんか屁でもない。
嫉妬を向けられるのは自己実現できている証だ。
多くを得る者は多くの人に恨まれることも承知している。
こんな生き方をしているうちに、私はヒロインコンプレックスをこじらせた。
ヒロイン気質の女が恨めしい。負けたくない。
私は一度も想いを告げられたことなんかないのに、ヒロイン体質の理沙先輩が青木さんに愛を告白されたことが妬ましい。
自分が彼女より彼に愛されていないことを受け入れたくない。
だから私は、絶対に自分からは告白しないと決めたのだ。