【完】傷だらけのプロポーズ

「小田切さんめっちゃ綺麗じゃないですかー?本店でも仕事が出来るって評判で、憧れてる子も多いんですよ。
でもそっかあ、朝比奈さんと付き合ってるわけじゃないんですね、何か安心しました」

何故かニコニコと上機嫌になって、ティーカップを両手で握りしめる目の前の女。

分かった。十分に分かる。 君って俺に気があるのね?気が付きすぎてしまう自分が憎い。 今までに付き合ってきた女だって俺の事がバレバレに好きで、こうやって遠回しに美麻との関係を探って、何気なくアピールしてくる女ばかりだった。

でも、もう生産性のない付き合いはしないと決めていた。どうしたって俺の中の美麻が消えてくれないのなら、終わりの見える恋をしたって仕方がない。 そう、この15年間同じことの繰り返しばかりだった。

もう28歳だ。 遊びで女と付き合う期限はとっくに過ぎている。

「でも今、小田切さんは副社長ですもんね~」

「はぁ?」

「うちの会社の副社長のアピールがすごいって他店でも噂すごいですもんッ。
副社長と小田切さんなんてお似合いすぎて、素敵すぎる」

「どこがだよ……」

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