緩やかなオレンジ

風が肌をくすぐり、ここまで歩いてきて汗をかいた肌に心地よく当たる。

「悪かったな、結婚式に行けなくて」

「別に。まあ返事すらくれないのはさすがに驚いたけど」

結婚式の招待状を慎吾にも送った。けれど出欠席の返信はないままだった。

「結婚に反対されてるのかと思った」

「まさか、俺にそんなこと言う資格ないでしょ」

披露宴で慎吾がいないことに同級生は驚いていた。私が司さんと結婚することにいい気はしていないから来ないのだろう、なんてみんな言っていた。私もそうだったらいいな、なんて思ってしまった。
慎吾の中に少しでも私への思いがあってくれたら嬉しいなんて、司さんの横で思っていたのだから。

もし慎吾が司さんとの結婚に反対してくれたら……いや、告白されたときに断っていれば今こんなにも苦しんでいなかったかもしれない。

でも私が誰と付き合って結婚しようと慎吾は気にしていないのだと思い知った。司さんに告白された瞬間慎吾の顔が浮かんだ。けれど慎吾は私がいいなら司さんと付き合えと言った。

「慎吾はどうしてこの丘に来たの?」

実家を離れて隣県で就職して一人暮らしを始めたと母から聞いていた。私がここに来たタイミングで会えるなんて奇跡なのではと思えてくる。

「嫁が里帰りしてるから、なんとなく俺も帰ってきた」

「嫁? 結婚したの?」

「うん、年末くらいに」

これは知らなかった。母からは慎吾が帰ってきていると聞いても結婚したなんて聞いていなかった。

「私のお母さんそんなこと言ってなかったのに……」

「俺の母親が言い辛かったのかも。デキ婚以下だし」

「何それ。デキ婚に以下なんてあるの?」

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