コイノヨカン
「ごちそうさまでした」

ゆっくりとコースで出されるお料理いただき、店を出る頃には9時になっていた。

「気にいってもらえたかなあ?」
と、伝票を持った健さん。

結局何も聞き出すことはできなかった。
本当は言いたいこともあるのに、私も今は追求する気力がないまま食事が終わってしまった。
しかたない、落ち着いたら話をしよう。

「じゃあ、送るよ。萌ちゃんの家でいい?」
「はい」

萌さんか帰っているかなあ。
まだならどこかで時間をつぶさないと。
私はカバンから携帯を取りだし、切っていた電源を、

あああぁ
凄い数の着信。
それも全部渉さんから。

マズイ。

「どうしたの?」

顔色を変えた私を健さんが気にしている。

「大丈夫です」
「嘘。凄く顔色悪いよ」
「そんなことありません」

私は精一杯平気な振りをした。



車は都心を抜け郊外へ。
30分ほど走って、萌さんのマンション付近。
とても静かな住宅地。

「その先だよね?」
「ええ」


マンションの前まで来て、車は止った。
その時、
< 134 / 236 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop