コイノヨカン
「でも、じゃあ健さんは?」

楓さんが変な提案をするから、健さんまで登場してややこしくなっている。

「あの子は人に左右される子じゃないから、健自身が栞奈さんに興味を持ったんだと思うわよ」

「そんな・・・」

「栞奈さん。あなたの知らないところで色んな事が動いていて面白くないかもしれないけれど、あなたは気にすることはないよ。私との約束通り6ヶ月渉と付き合ってくれればいいの」

「そんな簡単に、」

「自分の気持ちのままにすればいいわ。そんなに悩むことじゃないでしょう?」

「そんなことを言われても、相手のあることですし。それに、凜さんとのことはどうするんですか?」

ここまで大きく報道されているのを会長や楓さんが知らないはずがない。
私との交際を勧めながら、凜さんとのことも黙認するって、矛盾している。

「私は栞奈さんを気にいっているわ。でも、あなたじゃないとダメだとは思っていないのよ。渉が香川の娘さんを選ぶなら、それはそれでいいの。会社にとって損はないんだから。冷たく聞こえるかもしれないけれど、私も主人も商売人だからこんな考え方しかできないのよ」

「そんな・・・」

私は言葉が出なくなった。

「栞奈さんは、渉のことが嫌いなの?」

「いえ」

「じゃあ何を迷っているの?私との約束を口実に気持ちを誤魔化したり、傷つくのを恐れて逃げ出しても、後悔するだけよ。私は背中を押してあげる気はないわよ」

私の気持ちかぁ。

確かに、始めは苦手でしかなかった。
俺様で、わがままで、いつも上から目線で、早く6ヶ月が終わればいいと思っていた。
でも、いつの頃からか会うのが楽しみになった。
できることならずっと側にいたいと思った。
やっぱり、恋をしているんだろうか?

「もう、答えは出ているんじゃないの?」

「・・・」

私はどんな言葉がほしくてここに来たんだろうか?
私の気持ちは私にしかわからないし、動かすことも止めることも出来ない。
こうなったら、誤魔化さずに向かってみよう。
『我ことにおいて後悔せず』
行くところまで行ってみるしかない。
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