コイノヨカン
**SIDE 渉**


カランカラン。
来てしまったのは、いつもの店。

「おお、渉」
やっぱり、大地も来ていた。

「いらっしゃいませ。いつものでいいですか?」
「はい」

代わり映えしないマスターとのやりとり。

「随分疲れた顔してるな」
「まあな」

松田グループの顧問弁護士の1人であり、俺や健とは幼稚園以来の付き合いの大地のことだ、おおよその事は知っているはず。

「こんな時、お前ならどうするんだ?」

事情説明もせずに、聞いてみた。

「それは、機嫌の悪くなった彼女と仲直りする方法って事か?」

うっ。

「わざわざ口にするな」

むかつく。

「まずは、お前が栞奈さんのことを好きだと伝えないとどうしようもないだろう?」

「伝わってないか?」

ハハハ。
大地が笑い出した。

「何だよ」
相変わらず、人の神経を逆なでする奴だ。

「お前ね、恋愛はビジネスじゃないんだ。そのくらいくみ取ってくれるだろうなんて考えでいたら、恋愛は続かないよ」

「じゃあなにか、毎日毎日『愛してる』とでも言うのか?」

「また、すぐに極端に走る。まあ、それも悪くはないけれど。まずは、栞奈さんのことが好きだとハッキリ言ってやれよ」

「ハッキリね」

「そうだよ。全く違う人生を歩いてきた2人がいるんだ。思いをくみ取れなんて無茶だよ。それに、栞奈さんはお前より5つも年下なんだろう?お前がリードしてやらないでどうするんだ」

「へえー」

大学時代から、大地はよくモテた。
その理由が分かった気がする。
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