コイノヨカン

数日の入院で退院した私。

真っ直ぐ実家に連れて帰られた。
できることなら松田のお屋敷に帰りたかったけれど、許してはもらえなかった。
家には私の部屋が準備されていて、荷物も布団も運び込まれていた。
そして、

「当分、一人暮らしはさせないからな」
父さんに言われ、頷くしことかできなかった。

こんなに怒った父さんを久しぶりに見た。
それだけ心配をさせたって事だと思う。


自宅に帰ってもすることがなく、私は時間をもて余した。

もちろん怖い思いはした。
怪我だってした。
でも、恐怖心はない。
私には、誰の仕業かが分かっているから。


「姉さん。渉さんが来てるよ」
旺がドアから顔を出した。

「うん。ありがとう」

退院して以来、毎日のようにやってくる渉さん。
交際には大反対の父さんを避け、いつもお昼休みに来てくれる。

家の前まで来るとメールで知らせてくれるけれど、なぜか旺の方が先に気付いてしまう。

「ちょっと出てくるね」
私の看病のため仕事を休んでいる母さんに言い、玄関を出た。
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