結婚した次の日に同盟国の人質にされました!
「こんな所で立ち話も無粋なので、そこの軽食屋でビールでも飲みながら話しませんか?」

「そうだなバシリー。ジル行くぞ」

 ジルはハイネに手首を掴まれ、近くの店に引きずるように連れて行かれる。
 マルゴットの方を念を込めて見つめると、彼女はジルの願いを察した様で、馬車の方向へ走っていた。



「アンタここで何やってた?」

 年期を感じさせる店内は、温かな雰囲気なのに、ハイネとバシリーに尋問されるかの様に二対一の構図でテーブルを囲む事になり、非常に居心地が悪い。

「それは……えっと……」

「バシリーも知らないって事は無断で外出したのか?」

「はい……」

「協力者の名前は? アンタとあの侍女の2人だけで抜け出せるとは思えない」

「……」

「言えないの? さっきアンタの侍女が走って行ったけど、その先に協力者がいたんだろ?」

「あ! そう言われてみるとそうですね! クソ! あの女!」

 バシリーはハッとした表情で立ち上がり、拳を握りしめた。

「お前あれで気づかないって、相当酷いぞ……」

「申し訳ありません! すぐ追いかけます!」

 ハイネに冷たい目で見つめられたバシリーは顔色を無くし、店を出て行った。
「何か注文しよう。昼時だし」


 バシリーがいなくなる事で、余計に気まずくなるかと思ったが、ハイネが店主に適当に注文を始めた事で少しだけ拍子抜けした。

「ハイネ様はこういう店にも来られますのね?」

「ああ。市場価格のチェックに来てた。どこかで買い占める奴がいると、値段が吊り上がったりするから、見てると色々気付けてわりと面白い」

「ご自分の目で見て見ないと気が済まないのです?」

「上がって来る書類だけで判断しても視野が狭くなるからな。時々現場に出向いて生の動きを見るんだよ」
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