結婚した次の日に同盟国の人質にされました!
「凄いですわ」



「これくらいで凄いわけないだろ? 遊びの延長だ」



 そうはいいつつも、ハイネの頬がほんのりと赤く染まっている。照れているのかもしれない。



「あ……。バシリーから聞いてるかもしれないけど、公国に離縁状出したからな」



「バシリーさんからは何も聞いていませんわ。というか、やっぱり私のサイン、勝手に書いたのですね」



「しょうがないだろ、アンタがさっさと書かないんだから。こっちだって悠長に待ってられないんだよ」



「悩んでましたのに」



「アンタが悩んで解決する事なのか? 無駄に悩まなくて済む様に決断してやった俺に感謝しろよ」



 横柄な物言いをするハイネに、ジルは怒りで頬を膨らませた。



「私と結婚を考えてるなら、全部一人で決めて、結果を押し付けるなんてこと、今後一切やらないでいただきたいですわ! 何様なのですか!?」



「何様って――俺はこの国の」



「あの……。ご注文の品をお持ちしました……」



 ハイネの言葉を遮るように、店主がビールや料理を運んで来る。

 ジルとハイネの会話の内容が内容なだけに、店主はもの言いたげな視線で2人を観察してからカウンターに引っ込んだ。

 恐らく、ジルとハイネの見た目上の年齢や身分にギャップを感じ、不気味に思ったのだろう。



(何なのよ皆、私を馬鹿にして!)



 腹立ちに任せて、ジルはビールを勢いよく煽った。



「おい……」



「何ですの!?」



「ピッチが速すぎないか? このジャガイモのツマミを食べろ」



 ハイネは嫌そうな顔で蒸したジャガイモにバターを乗せただけの料理を渡してくれる。



「もう、ハイネ様は性格地雷なのか、優しいのかこの際ハッキリしてくださいませ!」



「優しい……だと? 俺は冷酷な男だ。勘違いするようなら、この芋は俺の物にするからな」



「一度私にくれようとしたくせに! そのまま寄こしなさいよ!」



「アンタはホワイトアスパラでも食ってろ!」



「えー、お客様……。他の方々に迷惑がかかりますから、ほどほどに……」



「これは引くに引けない戦いなのよ!」



「余計な口挟むな! 俺を誰だと思ってるんだ!」



 心底迷惑そうに苦情を言いに来る店主にジルとハイネは食ってかかる。



「この店の中では皆平等なんだ! 出ていけ!」







 店主に不興を買い、ジルとハイネは店を追い出されてしまった。



「アンタと一緒に居ると、まともに飯が食えないんだけど……。この前だって肉を切り刻んだだけで帰る事になったから、宮殿で飯食おうと思ったのに、何も残ってなかったしさぁ……」



 一歩先を歩くハイネが、溜め息交じりに愚痴を言うので、ジルも情けない様な気分になる。

 しかもビールを一気飲みしたせいで、足元がふらつく。




(クラクラするわ……)



「こうなったら屋台で何か食うか、って、うわ!」



「ふぁ……」



 フラリと身体が傾き、地面に激突しそうになる。しかし、目の前に差し出された腕で支えられ、顔面は守られた。



「お、重い! 気を確かにもってくれぇ!」



「で、でも足に力が入らないのですわ……」



「ビールをあんな風に飲むからだろ? ハァ……」



 ハイネに胴を支えられ、何とかして辿りついたベンチの上に倒される。

 ジルを運び終えたハイネは、肩で息をし、地面に座り込んでしまった。



「悪いんだけど、ダイエットしてもらっていいか? 今後似た様な事になったら、正直辛い」



「でもハイネ様は太っているという理由で私を助ける事にしたのでしょう?」



「その通りだけど、俺は別にデブが好きなわけじゃない。ただ乳母にシルエットが似ていたから、気になっただけだ」
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