好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「怖かったの?遅くなってごめんね」
「……っ」
違うの。
違うんだよ。
そうじゃない。
いっくんの前で涙は見せないようにしているから、少し困惑した様子でわたしの顔を覗き込む。
そんないっくんのことが、どうしようもないくらいに好きなのに……。
「いっく、ん……」
「くるちゃん?」
好きになってよ。
わたしじゃだめなの?
いっくんに好きになってもらうためにいっぱいがんばったんだよ。
この16年間、いっくんだけを見てきたの。
わたしのぜんぶで、いっくんのことを好きでいるの。
いっくんを見つめると、同じようにわたしを見ていて視線が絡まる。
いっくんは、少しもわたしのこと好きじゃない?
恋愛対象に思ったことない?
もう限界だよ。
「ねぇ、いっくん……」
いっくんの着ている法被をぎゅっと握り、下に引っ張る。
その反動で、屈むような形になり距離が近づく。
このまま奪いたい。
あと、数センチ……。
「胡桃!」
「折原くん」