男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
(あるいはイネス様は自分が、と思っているかもしれないけれど……たぶんそれは、いくらなんでも許してもらえない)

 だって彼を裁くのはこの国(ロスティ)だから。
 優しくもあり厳しくもあるこの国は、どんな沙汰を下すのか。
 ことがことだけに楽観視はできないだろうな、とピケは嘆息した。

「そんなイネス様を見て、暗殺者を差し向けられていたキリル様まで同じことを言い出したものですから、では僕がやりましょうと申し出ました」

 イネスだけでなくキリルも同調したとあっては多少の減刑は期待できそうだ。
 良かったと思ったのも束の間、耳を疑うようなことを聞いてピケはギョッとした。

「え。ノージーが?」

 ノージーはまるで迷い込んだ猫を捕まえてくるみたいなノリで言っているが、そんな話ではない。
 立場的には上位である他国の王族の暗殺を手配し、妄想の末に恩人であるイネスをも殺そうとしている、いわば窮鼠のような男なのである。
 時間はない。相手は狂っている。そんな中、どうしてそんなことを請け負うのか。
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