DEAR again〜アイスクリスタルのやくそく
消えた小説家の秘密
「おはよう。佐川さん」
「おはようございます」

 部屋に入るなり、いつものように明るい声がした。広いデスクの上には一台のノートパソコン。他には何もない。声の主は、軽やかなタッチでキーボードを叩いている最中だった。

「もうちょっと待ってね」
「はい。お邪魔してすみません。先生。コーヒーを淹れましょうか。美味しい豆が手に入ったんです」
「わあ嬉しい。ありがとう」

 キッチンでお湯を沸かしている間に、棚からコーヒーカップを取り出す。

 静かだった。お湯が沸騰する音とかすかなキーボードの音しか聞こえない。いや。ごく小さな音量で音楽が流れていた。耳を澄まさないと聞こえないほど微かなメロディは聞き覚えがあった。
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