【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜




 「うわ、結構高いな?」

 「そうですね。結構高いですね?」

 観覧車の中から遊園地全体を見渡す。

 「高い所は平気か?」

 棗さんが突然そう話しかけてきた。

 「え?高い所ですか?……はい。大丈夫ですよ。棗さんは?」

 「俺は……。その、苦手だな」

 「そうなんですね?意外です」

 「え?意外か?」

 「はい。意外です」

 「……そうか。意外だったか」

 「はい。……わたしは棗さんのこと、何も知らなかったので。そういったことも知れて、よかったです」

 「そうか。俺もよかったと思ってる」

 「え?」

 「俺も今まで、お前のことを何も知らないままこうして一緒にいたんだ。……妻のことを少しでも知れたら、それで充分だよ」

 棗さんのその気持ちが嬉しいと、わたしは今思った。……棗さんのことを少しでも知れたら、少しは距離が近づくだろうか……。

 そんなことを、観覧車が回る15分の中でわたし思っていた。



< 74 / 264 >

この作品をシェア

pagetop