私、身代わり妻だったはずですが。


  * * *


「心咲ちゃん、着替え持ってきたよ。ここ置くね」

「あ……和志さん、来てくれたんですね。ありがとうございます」


目を開けると、目の前には和志さんが立っていて驚いた。


「鍵、ここに置いとくね」


和志さんが何か話をしているのにその声が遠くに聞こえる。なんだろう……色がないみたいだ。
 世界が灰色に見える。どうしてだろうか。


『残念ですが、赤ちゃんの心拍が確認できず……子宮内胎児死亡と確認され─︎─︎─︎─︎それで、一週間程度入院していただきます』


お腹に触れる。目立ってはなかったけど、ここにちゃんと命が宿ってて……っ


「……心咲ちゃん」

「は、はい……っあ、大丈夫です、ごめんなさい」

「謝らないで、無理しないで」


和志さんは頭をポンポンと優しく撫でるとぎゅっと抱きしめた。


「ごめん。泣いていいよ、もう我慢しないで……」


そう言われた瞬間に涙腺が壊れていくのが分かる。和志さんが「大丈夫、大丈夫」と背中を摩ってくれる手が優しくて、彼に甘えるように泣いてしまった。






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