偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「と、冬哉さん。おかえりなさい」
「……お前、今うしろの男と話してなかったか?」
見られてた!
とっさにカーディガンの上からスマホに触れそうになるのをぐっと堪え、ゴクリと息を呑む。
冬哉さんは目を開き、怖い顔で見下ろすことをやめない。
「あ……は、はい。話し掛けられたので、ちょっとお話していました」
「誰?」
「知らない人です。天気がいいですねだとか、少し世間話を……」
この言い訳では苦しいだろうかと冷や汗をかきながら笑って誤魔化してみるが、まったく表情を緩めてくれない冬哉さんが軟化する様子はなく、ついに言葉を詰まらせる。
「来い」
彼は、テーブルに置いたコーヒーをひと口も飲まずに私の手首を掴んで立たせた。力が強くて、ピリッとした痛みが走る。
相手がアキトくんだったことは、バレてなさそうだ。それならどうしてこんなに怒っているんだろう。