偽装懐妊 ─なにがあっても、愛してる─
「交換条件……?」
「金森製菓創業者、金森善次。凪紗を返すかわりに、アンタにふたつ要求する」
冬哉さん……?
「まずひとつ。アンタが創業時に開発したという銘菓、『はなごころ』の商標権を放棄しろ」
いったい、なんの話?
「なんだと……!?」
「ふたつ。門外不出とされる『はなごころ』の製法。それを記した五十年前の紙面が、本社内の歴史館に所蔵されているはずだ。その現物を、俺に寄越せ」
おじい様が「貴様っ……」とつぶやくと同時に、冬哉さんは「要求は以上だ」と締めくくった。
「どちらも果たされれば、凪紗を腹の子どもごと返してやる。産むかどうかはそっちの好きにすればいい。養育費が必要ならくれてやる。その後、俺は二度と、金森家に関わらないと約束しよう」
──なにを言っているの?
頭の中がグワングワンと音を立てて、歪んでいく。話の内容を、ひとつも飲み込めない。