政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 モンタニア本社から少し離れた場所で待っていた私は、やっと現れた秋瀬くんを見て思わず駆け寄っていた。

「秋瀬くん」

「お、抱っこするか?」

 私を受け止めるように両手を広げられ、すぐに足を止めて後ずさる。

「なんだ、飛び込んでくれればいいのに」

「……外だし」

「外じゃなかったらやってくれた?」

「秋瀬くんは恥ずかしくないの?」

「別に?」

 本当にそう思っているように聞こえ、少し考えてから再び足を動かす。そして、まだ広げられたままの腕の中に飛び込んでみた。

「えっ、マジ?」

 頭上から秋瀬くんの驚いた声がした。

「助けてくれて、ありがとう」

 茶化される前に、誤魔化される前に。伝えたい言葉を口にする。

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