政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「……こういうときはさ、先に『助けて』って言うんだよ。そんなに頼りない夫か、俺は」

 ぽんぽんと秋瀬くんが頭を撫でてくれて、不覚にも涙腺が緩んだ。

「強がらなくていいんだからな。妻を助けるのが夫の役目なんだ」

「……うん、かっこよかった」

 強がらなくていいというひと言に背中を押され、素直に感想を告げる。

「へえ。じゃあ、惚れ直した?」

 相変わらず秋瀬くんは私をからかおうとする。ちょっと前までは憎たらしいと思って足を踏んでいただろうが、今はそんな気にならなかった。

「好きにはなったかもしれない」

 ほんの少しの勇気を振り絞り、背伸びをする。ぐっと秋瀬くんの肩口を掴んで顔を寄せ、私からキスをした。

 とても久々に感じた柔らかなぬくもりが、私の顔に熱を灯す。

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