政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 三波さんが自分の首を指でトントンと示した場所を、ぱっと手で押さえる。怪我なんてした覚えはない。となると、ここに『そういう痕』を付けたのはひとりしかいないだろう。

「あっ、え、えっと、ひ、引っ掻いたかも、です」

「……あー、ごめん。野暮だったわ」

 失敗した。もっとうまく切り抜けなければならなかったのに、完全に見抜かれている。

「もしかして、最近やけに仕事に力が入ってるのって秋瀬くんとうまくいってるから――」

「そういうのじゃないです、ほんとに!」

 ぶんぶん首を振ると、不意に頭を掴まれた。三波さんではない。この大きくて遠慮のない図々しい手は秋瀬くんのものだ。

「秋瀬くんっ」

「んー?」

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