政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
「好きだよ。君も、君が作ったデザインも、なにもかも愛してる」

「私も秋瀬くんが好き。でも仕事では負けないから」

 えいっと勢いをつけて秋瀬くんに飛びつく。

「うわっ」

 勢いよく砂の上にひっくり返ったのを見て、素早く腕を押さえつけた。私が力を入れたところで、まったく意味はない。それでも、主導権は私にあるのだと思い知らせたくて。

「ぎゃふんって言って」

「キスしてくれたらいくらでも言うよ」

 まだ余裕を見せる秋瀬くんに、それならと覆いかぶさってキスをする。

 私からしたはずのキスは、気が付けば秋瀬くんからのものに変わっていた。翻弄され、とろけてしまいそうなほど甘い熱で包み込まれる。

「秋瀬くん」

「なーに、真白」

「呼びたくなっただけ」

「かわいいこと言うなよ」

 誰もいない海辺で名前を呼び、またキスをして少しだけ笑った。

 いつまでも「ぎゃふん」と言ってくれない意地悪な秋瀬くんに焦れながら、こういう意地悪ならいくらでもされたいと思った。

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