政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
短編:こじらせているふたり1
 今日は朝から秋瀬くんの様子がおかしかった。

「秋瀬くん、さっきのプレゼンすごくよかったね」

 廊下を歩く長身に追いつき、顔を見上げながら話しかけてみる。

 いつもの秋瀬くんなら、調子に乗ったにやけ顔で「惚れ直したか?」としつこく聞いてくるところだ。だけど今日は違う。

「ああ、うん。どうも」

 こんなの秋瀬くんじゃない。素っ気なくて、私を見ようともせず、適当に返す秋瀬くんなんて。

 この人は結婚する前も結婚したあとも、変わらず私を翻弄して、デレて、ちょっかいをかけて、意地悪をした。いつもよく飽きずにやるなと思っていたけれど、本格的に飽きが来てしまったのだろうか。

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