政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
短編:こじらせているふたり3
***


 その夜、秋瀬くんは残業すると言って私と帰りをずらした。それも避けられているように感じて悲しくなる。

 たったひとりで帰ってきた家は寒々しかった。なにをする気力も湧かなくて、ソファに座り、膝を抱える。

 私はたぶん、とても落ち込んでいる。秋瀬くんの様子がいつもと違う、たったそれだけのことで、夕飯を食べる気にもなれないぐらいへこんでいる。

 抱えた膝に顔を埋めた。秋瀬くんはいったいどうしてしまったというのだろう。本当に私に飽きたのだろうか。

 ただ虫の居所が悪いだけなら、それでいい。八つ当たりをするような人ではないと思っていたけれど、人間なのだからたまにはそういうこともあるだろう。甘んじて受け入れるから、この状態を続けないと約束してほしい。

 吐いた溜息は自分で思っていたよりも重く響いた。

 答えも出ず、寂しさを抱えて顔を埋めてどれくらい経っただろう。

< 310 / 342 >

この作品をシェア

pagetop