政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 顔を上げようとして初めて、自分の頬が濡れていることに気づいた。こんな顔を見せるわけにはいかないと慌ててうつむこうとして、その前に秋瀬くんの手で顎を持ち上げられる。

「泣いてたのか?」

 なぜか秋瀬くんの方が傷ついた顔をしていた。今日一日ずっと冷たかったその人ではなく、私の知る秋瀬くんが戻ってきたようで、じわりとまぶたが熱くなる。

「秋瀬くん」

 両手を伸ばし、秋瀬くんを抱き締めた。強張った身体には構わず、勝手に胸に顔を埋めて頬をすり寄せる。

「私のこと、嫌いになった?」

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