政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 さっきよりはいくぶん優しいそれにほっとしていると、不意にドキリと心臓が跳ねた。

 手首を掴んでいた手が滑り、私の手のひらに重なってくる。

 強引さが消え、代わりに甘えるように指を絡められた。キスにだけ向いていた意識が手のひらに移り、秋瀬くんの体温の高さや手の大きさ、指の長さに集中させられる。

 息の苦しさはなくなったのに、今度は胸が苦しくなった。

 これでは、本当の夫婦ではないか。

 だって私も秋瀬くんのキスに応え始めている――。

「ふ、ぁ」

 秋瀬くんの唇が離れた一瞬の間に、小さく濡れた声が漏れる。

 驚いたような瞳に捉われたと感じたとき、カクンと膝の力が抜けた。

「しろちゃん」

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