チャラい彼は、意外と一途


「うん、いいよ」


「やった!」


「じゃあ、2人で遊んどいて」


「ううん、お兄ちゃんも!」


「えっ、僕も?」


佐野先輩も巻き込んで、けんと君と遊んだ。


だから、すっかり懐かれてしまったんだ。


「けんと!」


「あ、お母さん!」


けんと君のお母さんが迎えに来る頃には、私はくったくたに疲れていた。


「ご迷惑おかけしてすみませんでした。けんと、帰るよ」


「やだ!お姉ちゃんやお兄ちゃんとまだ遊ぶ!」


「けんと!」


うーん、どうすればいいのかな……?


そんなやりとりを聞いて、困っていると……

 
「けんと君」


じっと静かに見ていた佐野先輩が前へ出て、けんと君と同じ目線に合わせてしゃがんだ。


「世の中にはね、お母さんに会いたくても会えない人がいるんだよ。亡くなってしまったり、忙しいから家帰ってもいなかったり、理由は様々あるだろうけど、けんと君はお母さんがいる。それが当たり前と思っちゃダメ。君のお母さんは必死になって君を探してたみたいだし、困らせないためにも帰りなよ」

 
どこか、羨ましそうな顔。


それを見て、きっと自分の環境を思い出してしまったんだろうなって思った。


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