終わらない夢
「そんなことさせないよ!」
辺りに大きく、その声が響いた。振り返ると、少女がいた。かわいい、女の子。ずっと見られていた、女の子。
「優奈と私はずっと一緒。そしたら、あんたたちもこのまま。これで何がいけないの?」
笑いながら言う彼女の声は、おそろしく冷たい。まるで人ではないような声だ。
「雪…私のこと、覚えてる?」
「…お姉ちゃん?」
「うん。あなたの姉。あなたのことを分かってあげられなかった、馬鹿な私」
「今さら…なに」
だんだん雪の声に冷たさが増してくる。本当に、恨んでいるんだ。本当に…悲しかったんだ。
「私は、あなたに贖うの。姉として未熟な私だけど、なにもできない訳じゃないから」
「こっち、来ないでよ」
冷たい風が吹いている。それは、勢いを増して、何もかも吹き飛ばしそうな勢いになりつつある。
「瑠夏ちゃんっ…」
「…優奈、なんで?お姉ちゃんのほうがいいの?」
「私はだれがいいとか、そんなの興味ないよ」
雪がいいとか、彼女がいいとか。そんなの私のエゴでしかないのに。私の気持ちを押しつけるなんて、そんなバカバカしいことできない。
「ごめんね。私も悪いよね。あなたの気持ちは、なんとなく分かってた。でも…言えなかった」
「謝らないでよ…私の優奈は、そんなこと言わないよ…優奈は悪くないよ…」
「雪…正直に話して。私に何がしたかったの?どうして、こんなことをしたの?」
雪はどんどん声に冷たさを含ませている。でも、私が聞いた途端に、冷たさが和らいできた。
「そんなの聞いて、どうするつもり…?」
「雪の気持ち、確かめたい」
目を見ても、まるで人の目をしていない雰囲気を持っている。
「どうせ、お姉ちゃんがそれを聞いて、裏切るんだから。ふたりきりの時に話そうよ?」
「ダメ。ここで話して」
「なんっ…」
「雪」
「………」
「話して」
「………優奈のこと、好きだった。初めて会ったとき、胸がドキドキした……好きで、好きでたまらなかった」
たぶんこの気持ちは、本物。おばあさんからもらった愛情。でも、それに雪の気持ちが合わされば、少し捻じ曲げられてしまう。
「でも、好きだって思えば思うほど…優奈のこと、独り占めしたくなって…」
「……」
「ごめん…」
雪はその場に座り込んだ。
「雪…」
「……優奈のこと、本当に好き。ずっと好き。とっても、好き。大好き…」
雪が全て悪いとは言えない。歪みが、歪みを産んでしまったんだ。
「優奈は、私のこと、どう思ってる…?」
「私の好きと、雪の好きは違うよ」
「そうだよね、うん…そうだよ。知ってた。全部知ってた」
私にも非がある。私がはっきりしないから、雪をここまで苦しめてしまった。
「雪…」
「優奈っ……」
「もう、かえろう?」
私は雪を包み込んだ。
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