今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
(係長、起きてるかな……)

 以前、怖かったら一緒に添い寝してやろうかと言われたことを思い出す。

 やっぱり自分は酔っている。
 あれは相澤がほろ酔いのときに冗談で言われた言葉だとわかっていても、そんな言葉に縋りたくなった。

「係長、起きてますか?」

 そっとドアを開けると、まだベッドサイドのダウンライトがついているのが見えた。おずおずと声をかけると、机に向かって何かをしていた相澤が驚いたように振り返る。

「どうした?」

 ちらりと見えた机の上には、硯と筆、それに紙が見えた。

 習字、だろうか?

「一緒に寝たらだめかなって思って」
< 125 / 296 >

この作品をシェア

pagetop