今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
陽茉莉は首を傾げる。場所がわからずにスマホで検索すると、三駅ほど先にある神社であるとわかった。
「じゃあ、お姉ちゃんとこの神社にお参りに行く?」
「本当?」
床に突っ伏したままだった悠翔がガバリと起き上がり、こちらを見上げる。ずっと亀のように伏していたせいで紅潮した頬は涙で濡れ、大きな瞳にはまだうっすらと水の膜が張っている。
「うん。たまにはちょっと遠くにお散歩に行こうか」
陽茉莉は悠翔と目線の高さを合わせるようにしゃがむと、にこりと微笑む。
(係長のお仕事を邪魔するわけじゃないし、それくらいは平気だよね……?)
その神社に何があるのかは知らないけれど、そこに行きさえすれば悠翔も満足するだろう。