今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
    ◇ ◇ ◇


 結局、相澤が家に帰ってきたのは夜の九時を過ぎた頃だった。

「ただいま」
「お帰りなさい。ご飯、すぐに用意しますね。ちょっとだけ時間ください」

 陽茉莉は手早く肉を焼くと、お皿に盛り付ける。そして、ダイニングテーブルに向かって座る相澤の前に、それを置いた。

「このショウガ焼きのショウガ、悠翔君が剥いてくれたんですよ。手伝ってくれました」
「へえ。俺はあんまり料理しないから、珍しいのかもな」

 相澤はそう言うと、立っている陽茉莉を見上げた。

「新山、ありがとうな」

 にこりと微笑まれ、茶色の瞳が優しく細まった。なぜか急激な気恥ずかしさを覚える。
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