今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
陽茉莉は当然のように答える。コントロールも何も、それがあるということすら自分ではよくわからない。
「…………」
ふたりの間に微妙な沈黙が流れた。
簡単だと聞いていた祓除師の修行だけれど、実は前提条件が違う気がする。
「もしかして、私には無理ですか?」
高塔の反応を見て、陽茉莉は本当に自分にもできるのだろうかと不安を覚えた。
「いや、大丈夫。札を作れるようにはなるはず」
祓除の強さは弱いかもしれないけど、と高塔がボソリと呟く。
「ここだとなんだし、場所を変えようか」
陽茉莉のほうじ茶ラテがほとんどなくなっているのを確認した高塔が、伝票を持ってすっくと立ち上がる。
陽茉莉は慌てて残っているほうじ茶ラテを飲み干すと、高塔の後に付いていった。