今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
 頭を抱えてぎゅっと目を瞑ったそのとき、どこかから「新山!」と叫ぶ声が聞こえた。

 ぎゅっと体を包み込まれるような感覚。
季節外れの強い風が吹き、「ギャー」と悲鳴が聞こえた。

「新山! 新山! 大丈夫か!?」

 力強く両肩を揺さぶられ、陽茉莉は恐る恐る目を開ける。

「え? 係長?」

 そこには、心配そうに顔を覗き込む上司の相澤がいた。
 珍しく焦ったような様子で、髪の毛も少し乱れている。

 陽茉莉はきょろきょろと辺りを見渡した。

(あれ? あのおかしな化け物は……)

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