運命の一夜を越えて
口の上にまでマフラーを巻かれて、私が話せないでいると、タクシーの窓の外で『風邪ひくなよー』と笑う瀬川渉がいた。

走りだすタクシーの窓からその姿を振り返り目で追いながら、口元まで巻かれたマフラーを何とかほどいた私。

無邪気に手を振る瀬川渉が小さくなっていく。

私は観念して前を向いた。

タクシーの運転手に住所を伝えてからほどいたマフラーを再び首に巻く。

ラーメンを食べて熱々になっていた体は一気に外の空気に冷やされて、少し寒い。


瀬川渉のマフラーからはかすかにお日様のような・・・懐かしい香りがした・・・。
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