運命の一夜を越えて
緊張する手が携帯のディスプレイが見えるようにすると、そこには”お母さん”と表示されていた。

私はほっと胸をなでおろしてから、画面をスライドさせる。

「はい」
『元気なの?』
「うん。元気だよ。」
『もう師走だからねー。忙しいでしょ。』
「まぁね。クリスマス前はどうしても忙しいよ。」
懐かしい母の声。

実家は私が一人暮らしをしているマンションから新幹線で1時間、バスで30分ほどの田舎にある。
周りには個人商店くらいしかないド田舎だ。

年に数回は実家へ戻っている私。

『お正月は帰ってくるんでしょうね?』
「もちろん。もう新幹線のチケットかったよ。」
『そう。楽しみに待ってるわ。』
「うん。お土産、なにがいい?」
『いらないわよ。』
母は気を使って私に何かが欲しいとは言わない。
それでも母の好みをわかっている私はいつも何かお土産を買って帰るようにしている。
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