運命の一夜を越えて
お母さんは私が闘病している時、すぐ近くでその姿を見て来た。
お父さんをがんで亡くした時も、つらそうに陰で泣いていたお母さんを思い出す。

きっとお母さんも思いだしているのだろう。

『すぐにでもあなたのところに行って、何言ってるのってげんごつしたかった。』
「ごめんなさい・・・」
『でもしなかったのは、きっとあんたが赤ちゃんを産む決断をするってことを、渉君が何度も謝るからよ。まるで自分があなたの命を削ってしまうように言って、何度も何度も・・・。』
隣に座る渉を見る。

あの時、もうすでに渉は私の覚悟を知っていたのだ。

『それに』
「・・・」
『彩がどれだけ望んでいたことか、お母さん分かるから。』
「うん」
『なんて馬鹿な決断だって思うけど、あなたの気持ち・・・わかっちゃうのが本当につらい。』
「ごめんなさい・・・」
『そう思うなら、しがみついてでも生きなさい。母親になるんだから、しっかりしなさい。』
「うん・・・」
涙に言葉を詰まらせながらお母さんは続ける。
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