運命の一夜を越えて
第十四章 現実
「ほら、赤ちゃん元気に動いてますよ」
高梨先生の言葉を聞きながら、私は渉と二人モニターにくぎ付けになる。
「まだ性別わからないですよね」
「そうねー。まだわからないわね。」
私の手を握る渉の手に力がこもっている。
モニターに引き込まれるように身を乗り出して見つめる姿に、思わず笑ってしまった。
「かわいいなー動いてる。」
「胎動を感じるまではもう少しかかると思うけど、時期に赤ちゃんが動くのをパパも感じられますよ、きっと。」
渉にそういう高梨先生の顔がすぐに真剣な表情になる。

「今のところ、子宮やその周辺には超音波で見る限り、異常はないですね。」
その言葉に私はほっと一安心して渉を見た。

渉も大きく息を吐きだして安堵しているように見えた。
「今のところ成長にも異常は見られないですよ。」
私たちは大きく深呼吸をして、一安心した。

「次は2週間後ですね。つわりも落ち着いてきているみたいだけど、無理はしないように。」
「はい」
私よりも先に返事をする渉。
「ありがとうございます」
私よりも深く深く頭を下げる渉。

私たちは謝ることをやめた。
その代わりに感謝の言葉を伝える約束をした。

私たちはたくさんの人の助けを借りないとこの命を守れない。
だから、謝るよりも感謝を伝えようと約束をした。
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