運命の一夜を越えて
「彩ー」

離れたところから振り向き私を呼ぶ渉。

微笑みで返すと、抱きしめている息子の小さな小さな手を握って、その手を私の方に向かって振った。

私も手をあげて振り返す。


「疲れたか?」

渉の言葉に首を横に振る。

「そっか。でも、帰ろうっか。寒くなってきたし。」

私の方に近づいた渉は私が砂浜から立ち上がるのを手伝ってくれた。
ありがとうの気持ちを込めて渉の方を見る。

「どういたしまして」
ちゃんと私が送った視線だけで、私の言いたいことをわかってくれる渉。
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