プラチナー2nd-

デート


クリスとの待ち合わせは原宿の改札前。この駅は社会人になってから初めてくる。クリスは紗子が改札を潜ろうとした時に既に改札前に居て、背の高い彼は人ごみの中から間違えずに紗子を見つけた。

「紗子さん!」

にこにこと笑みを浮かべて手を上げるクリスがかわいい。歩み寄ってくるクリスにICカードをかざして改札を抜けると、早いわね、と声を掛けた。

「こ、こんにちは! 紗子さん、オフィス着を着てないとかわいいですね」

こら、年上に向かってかわいいとは何事だ。でも褒められているので嫌な気分にはならない。

「幻滅した?」

紗子の仕事に興味があるなら、大人びた格好の方がよかっただろうか。そう言うと、クリスは緊張している様子で、いいえ、と返答した。

「きっと、山脇シェフや浜嶋さんはこういう紗子さんをご存じないですよね。そう思ったら得をしたような気持ちになります」

目を輝かせて頬を染めて、本当に初々しい印象だ。こんな行動を、自分は和久田に出来るだろうか。やはり目の前に立つクリスの笑みが眩しいと思った。

「ふふ、そんなに珍しいものでもないわ。普通のOLの私服よ」

今日の紗子の格好は、花柄のワンピースに花と同色のカーディガン、キャメルのブーツにボックス型の鞄だ。髪の毛は斜めに分けて、パールのバレッタで留めている。

「いやいや! 普通のOLさんでもこんなかわいい人居ませんよ!」

そう力説するクリスもなかなか決まっている。ワンポイントの黒Tシャツにグレーのパーカーとフェイクスキンのパンツ。足元はスニーカーで、すっとした顔立ちを生かしたスリムな着こなしだ。

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