料理男子、恋をする

それから三週間後、佳亮は実家に戻っていた。薫子と、望月が一緒だ。東京の待ち合わせ場所に望月が来たから何事かと思ったら、薫子の話に一枚噛んでいるらしい。佳亮はその内容を聞かせてもらえず、新幹線の中で打ち合わせをする薫子と望月に少しやきもきしたけど、薫子を信じることにした。

両親の時間が空く十五時に帰宅する。薫子と望月と一緒に居間で両親と対面した。両親からは、この前薫子に向けた敵意のようなまなざしは感じなかったが、薫子はまず両親に頭を下げた。

「今日はお時間取って頂いてありがとうございます。まず、過去に大滝がご両親の事業に水を差したことを、心からお詫び申し上げます」

今日の薫子は以前此処を訪れた薫子と違っている。目には強い光が宿り、仕事をする女の顔だ。

「大瀧の所為で、こちらの旅館を急遽不慣れなこの土地に建てなくてはならなくなったと、この前お伺いしました。そこでお話があります。こちらの旅館の内装と付加価値のあるサービスを、ご提案させて頂けませんでしょうか」

「内装とサービス?」

父が口を開いた。

「はい。失礼ながら、ホームページで旅館の画像を拝見させて頂きました。移転を急がれたようですので、その時から変わっておられないと思います。お客様に最もアピールするべき客室の内装を、私に手掛けさせてください」

「なんやと?」

両親の驚きに、薫子は明朗に応える。
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