料理男子、恋をする

デート


そういえば、デートらしいデートってしたことなかったな。そう思ったのは織畑の家からの帰りだった。久しぶりに薫子の家とスーパーの行き帰りじゃないところを薫子と並んで歩いていて気が付いた。

…と言っても、お付き合いはつい最近始まったばっかりだったし、そのあと織畑に誘われていたので、これは仕方のないことだった。

そんなわけで、佳亮は薫子と並んで歩くスーパーからの帰り道にそれとなく尋ねてみた。

「薫子さんは、僕と一緒に行きたいところってありますか?」

プライベートは詮索しないできたので、薫子の趣味などは知らない。最初に趣味なんかないと言っていたけど、好きなことくらいあるだろう。

「いきたいところ…」

おうむ返しにされて、照れが混じる。

「す、好きなこととか…。何かあれば……」

すきなこと、とまた薫子が呟く。

「…そうね、運転は好きだわ。最近してなかったけど、前は遠くまで走ったりしてたなあ」

ドライブか。それは車を持っていない佳亮が太刀打ち出来ない分野だ。だけどもう直ぐ紅葉の良い季節になるから、出かける理由は作れそうだ。

「…じゃあ、紅葉狩りに行きませんか。僕、お弁当用意しますよ」

「じゃあ私が運転するわね。お弁当、楽しみ」

無邪気に薫子が笑ったので、面子とかはどうでも良くなった。結局佳亮が薫子に喜んでもらえるのは料理だし、それは自信にもなっていた。

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