料理男子、恋をする



「望月くんは何時頃から剣道をやっているの?」

兄、樹の誕生日パーティーの事だった。やはり薫子の相手にと子供も呼ばれていて、でも薫子は部屋の隅で立っていた望月に話し掛けた。望月は驚いたように薫子を見て、それから、小学校の頃からだよ、と応えた。

「大滝さんは柔道もやってるんでしょう? 強いんだって聞いたよ」

「そうね、県大会で二位だったわ。優勝出来たらよかったのに」

薫子が悔しそうに言うと、望月は二位でも凄いよ、と微笑った。でも薫子は、一番になることに意味があると思っていた。

「だって、自分を守るためには自分がちゃんと強くなきゃ。勝負は嘘をつかないわ。だから私は一番を取りたかったのよ」

決勝戦で畳の上に投げられた時の事を思い出して悔しく思っていると、それじゃあさ、と望月が提案した。

「僕も強くなって、一番を取るよ。そして僕ら一緒に背中を預けて守り合ったら、怖いものなんて居なくなるんじゃないかな」

微笑んで望月の言うそれは凄く名案のように思えた。こんな物騒な世界で、子供でも自立して己を守る。大人に囲まれた世界で、それはとても魅力的な約束に聞こえた。



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