最後の悪夢

音も立てず一瞬のうちに、獲物に食らいつくようにに勢いよく、その首を両手で掴み、その勢いで二人はそのまま地面に倒れた。凛上が先輩の首を絞めている、と理解するまで時間がかかった。そんなのあり得ない。肝が冷えた。


「お前なにしてるんだ、離せ!!!」

「殺す気か!! 犯罪だぞ!!!」


河井先輩の周りにいた他の先輩が、二人がかりで凛上を引き離そうとする。それでも凛上は必死だった。私も他の特待生も戸惑い、動けなくなっていた。それぐらい衝撃的で。

「もう人殺しなんだから関係ないだろ」

「わざわざ女に手を出すなんてどんだけ性格悪んだよ、オイ!!!」


体育館の中に響き渡る怒声。心臓の鼓動が速くなっていく。男同士の喧嘩は相当迫力があるって分かっていた。でも実際目の前にすると、こんなにも怖い。


「そっちがその気ならこっちだって!! お前みたいなやつだから推薦を貰えないんだよ、分かるかゴラァ!!」


どうしようもないとおもったのだろう。とうとう一人の男の先輩が、凛上の体に思い切り蹴りを入れた。さすがに耐えきれなくて手を離した凛上。咳き込みながら先輩見上げ、憎悪を明らかにして睨む、その顔を、見ていて、どんどん、辛くなってくる。まるでなにかの劇を見ているみたいだった。
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