赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
目の前で大切な幼なじみを侮辱されたのが許せなくて。
気づいたら、潤くんを庇うように彼女の前に立っていた。
「へぇ……可愛い顔してけっこう言うねぇ。味覚バカに盲目になってる彼女…………どんな味がするのか気になるわ」
沙弥香さんの顔に不敵な笑みが浮かび、口角が怪しく上がった。
瞳は真っ赤に変色し、唇の隙間から鋭い牙が顔を出している。
危険を感じて、その場から逃げようとしたけれど……。
「やあっ……!」
彼女の手が後頭部に回り、首筋に牙が食い込んだ。
強い痛みに顔を歪めた、その直後。
「うぇぇぇっ! 何この味⁉ クソマズいんだけど⁉」
道端に吐き捨てられた血、率直な感想。
見たくなかった、聞きたくなかった現実を目の当たりにし、視界が涙で滲んでいく。
そうだ、これが普通の反応なんだ。
潤くんに受け入れられてすっかり忘れていたけれど……他の人からしてみたら、私の血は異常。おかしいんだ。