金曜日の恋人〜花屋の彼と薔薇になれない私〜
 匠が帰ってこないのは、一体誰のせいなのか。

 浮気性の匠がいけないのか、人の夫を平気な顔して誘惑する里帆子のせいか。それとも、夫ひとり満足させられない芳乃が悪いのだろうか。

 答えのない問いを、もう何年も、金曜日がくるたびに考えている。

「あぁ、でも今夜は食事をしなくていいんだった」

 美しく飾ったダイニングでのひとりきりのディナー。死にたくなるほど虚しい時間。
今夜は霧斗のおかげでそれを回避することができた。それだけで、芳乃の心は少し軽くなった。
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