契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「口では何とでも言える」
 
やっと口をきいたかと思えば……。
 
 今はそれしか手立てがないというのに、頭ごなしにそう決めつける父に腹が立つ。でも大吾さんはひとつも表情を変えずることなく、父のことを見ている。

「そう言われてしまえば、返す言葉がなく正直痛いですね。ですが何度そう思われても、私は気持ちを変えるつもりはありません。八重さんを幸せにしたい、それは偽りのない本当の気持ちです」
 
 そう言った瞬間繋がれた手に力が込められて、ハッと彼を見上げる。今の言葉にどんな意味が込められているのか……。
 
 それは大吾さんにしかわからないけれど、私の今の気持ちならはっきりということができる。大吾さんを見つめたまま、その気持ちを吐き出した。

「幸せにしてもらうだけなんて嫌なの。私だって大吾さんを幸せにしたい。お互いを想いあって、相手のことだけじゃなくふたりのことを一番に考える。結婚ってそういうことでしょ?」
 
 一気に話して息が苦しくなり、大きく息を吸い込む。ゆっくりと両親のほうを向くと、父の表情がさっきまでのものより少し穏やかになっているのがわかった。



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